バリ島  帰国日はテロの夜
2005/9/28〜10/2
 
バリ美人

Yさんとバリ島へ行く計画を立てたのは、今から3年前、2002年の秋であった。「ではこの日取りで旅行社に電話するね」と決めた翌日、バリ島でイスラム過激派のテロがあり、中止にした。直後にマルタ島へ行ったが、翌年から、夫の発病、入院、転居とつづいて海外旅行も3年間のブランクとなった。

今年、Yさんとメールのやり取りをしているうちに、なんとなくバリ島へいこうということになり、H.I.Sの手配で出発した。オプショナルツアーのプランは何も立てず、「のんびり」というコンセプトで行ったが、プレステージプランにだけ乗った。
 1 プライベート送迎
 2 アクアトニックプール
 3 アロマティック花びらマッサージ
 4 クフビーチでピクニックバスケットランチ
 5 プライベートガセボでのロマンティックキャンドルディナー
以上全部で3万円なのでまあ手ごろかなと思ったわけである。この中に大笑いの種があるのは知る由もなかった。

9月28日
 ングラ・ライ国際空港で入国手続きを済ませ両替所の近くまで来ると,、白い服装の男性が二人、私たちの荷物を運ぼうとする。ハハーンこれが 1 のプライベート送迎なのかと思ったが、真っ赤な偽物、ほんの数メートル行っただけで1000円のチップを要求される。Yさんが持っていた数百円の日本円をわたした。両替はそこだと示されたが、空港内の両替所でも結構ごまかされると聞いていたので、No Noと外へ出た。
一般の旅行社の迎えの人は更に数メートル先の柵の辺りにいるのだ。二度目なら決まりのアロハシャツを着た人だけが旅行社の人だと分かるのだが、初めて来ていきなりの被害であった。
出たところでカードでキャッシングする。後日クタの街へ出たら追加すればいいからと、とりあえずの現金を得た。機械は多分ごまかしがないから安心である。
運転手つきのワゴン車に、送迎係りと私たち二人だけ。たどたどしい日本語で何かと説明してくれる。
ングラ・ライ国際空港というのはバリ島の英雄の名をつけたものだという。世界に例がないと自慢していたが、ケネディー空港だってあるではないか。
このあたりは漁村であるというような説明を一生懸命聞き取っている間に、いつの間にかゲートを通過してホテルの玄関に着いた。ザ・リッツカールトン・バリ・リゾート&スパである。

明日は一日予定がないので、ここでバリ島のダンスと、モンキーフォレストと夕食の組み込まれたツアーに申し込む。
部屋はオーシャンビューにアップグレードしてくれたが、突然のアップグレードらしく、まだ洗面所などの掃除が済んでいなかった。
疲れていたのでサンドイッチのルームサービスを頼む。

ルームサービスのサンドイッチ

天蓋つきのベッド

実沢山のスープもついていて、なかなかボリュームもあって、美味しかった。
生まれて初めての天蓋つきのベッドで豪華な眠りについた。

9月29日
朝食のバイキング場では二人の男性が、木琴風のバリの民族楽器でBGMの生演奏である。                    

.....
同じアジア人であるから
日本人とよく似ている
ホテルには、美男美女が多い。
戸外で食事できる。
朝食のとき一度だけ雨がぱらついたが
すぐ止んだ。

昨日予約したオプショナルツアーの出迎えを受けて出発。新婚さんと同車である。妊娠7ヶ月とか。

ネカ美術館
ゴーギャンを思わせる絵
民家訪問
揚げ菓子を作っている

モンキーフォレストは薄暗い森で人間に良くなれた猿がいっぱいいたが、余り興味深いところではない。童謡にある南の島の「しっぽのながい・・」お猿さんたちである。
次に入った土産物屋は、「初めの値段」なんていって最初から値切り交渉の体勢なのがおかしい。
パティックの巻きスカートを買う。
とあるホテルへ早めの夕食のために入ったが、なんとなく薄暗く、清潔さのないホテルである。ふと鳥インフルエンザのことを思い出したら食欲がなくなり、ちょっと生焼けの鶏肉に手がでなかった。
本日のメインイベント、【レゴン・トランス:パラダイス・ダンス】はとても見ごたえがあった。

.....
ダンスが行われる
寺院風建物の庭
よく訓練されたダンサーたちはみな美しい。
踊りながら楽器を演奏するこのダンサーは非常に知的な美人である。
一流のダンサーなのだろう


このあたりでバリ島の地理と歴史を。
太平洋戦争中に小学校時代をすごした私はあの頃、南の国の島々の地図は何も見ないでも描けた。そして島の名も【ジャワ・スマトラ・ボルネオ・セレベス・マレー半島・フィリッピン】など覚えていた。今は勿論だめである。

それらの島々が戦後独立し主としてインドネシア共和国・ブルネイ王国・マレーシア・フィリッピン共和国などとなったのだ。
この辺りから私たち年配者の記憶が混乱してくる。ボルネオの北西部ブルネイ王国は豊かな国で王様は世界有数のお金持ち。国民に所得税はない、などとなると「へえー」とびっくりするばかり。
さてバリ島はインドネシアのジャワ島の東隣、インドネシア領である。ここはその昔は王国であった。インドネシアは19世紀オランダに支配されていたが、太平洋戦争中、日本が占領下に置き、戦後再びオランダが支配した。スカルノらの独立運動が成功して、1949年オランダから独立してインドネシア共和国となり、翌1950年バリ島が加わった。
その独立戦争のバリ島の英雄が空港にその名を残すングラ・ライ中佐である。
バリ島は、イスラム国インドネシアの中にあって、ヒンズー教が盛んな地方である。これは観光収入を得るためのインドネシア政府の方針によるものであったらしい。                        

9月30日 プレステージプランの2,3,4,5をやった。
2 アクアトニックプール。これは海水を利用した世界最大のトニックプールということなので、どんなものか興味深かったが、いろんな種類のジャグジー風の施設を一つのプールの中に並べたようなもので、順に移動して、体のあちこちに波を当てるようになっている温水プールといえばいいのかな。
約2時間しっかりほぐされた。

4 クフビーチでのピクニックランチ 
海岸までバスケットに入ったランチを持ってきてくれるのだが、断崖につけられた階段を、100段以上降りなければ浜辺のレストランに出られず、帰りが大変だろうと断念して、上の東屋で食べることにしたが、そこではナイフやフォークが無いとのことで結局、庭に戻って庭園プールのそばの東屋でお弁当を開くことになった。
インドネシア風のランチを選んだのだが、ランチとはいってもなかなか凝ったものでボリュームもたっぷり。
なかでもピーナッツを油で揚げてから味付けしたものが美味しくて、残さず食べた。他の料理もみな美味しかったが、量が多すぎて食べ切れなかった。前述のピーナッツをこそ残すべきだったのだが・・・。

海岸の東屋からの眺め
下はプライベートビーチで
簡単なレストランがあるが
元気な若者の世界
海の見える庭

3 アロマティック花びらマッサージ

花びらの敷き詰められたベッドでの上でマッサージを受けるというもの。
女性の手でやさしくマッサージしてもらうのは、いい気持ちだけれど、肩こりがほぐれるほどの強さではない。
ここの売店でラベンダー入りの石鹸を買って夫へのお土産にした。枕元へ置いておくと時々ほのかな香りがして、いい気分だと鼻のいい夫は言う。

恋人たちの夕暮れ

この写真はアクティブエルダーというサイトの
今月の逸品に
選ばれました。
庭のウエディング用の
小さなチャーチ

さて次は極め付け、5 プライベートガセボでのロマンティックキャンドルディナー である。
旅行社で設定しているプレステージプランはなんとなく割安感があったので、オプションに組み込んだのは前述の通りである。
ホテルでよく聞くと、特別な東屋(それがプライベートガセボというらしい)での、キャンドルのもとでの特別なディナーらしいのだが、実際にそこへ行くまで、それがそんなにも特別なものとは思わなかった。
ボーイさんに案内されて庭に出て驚いた。庭の一番奥の海のすぐ近くの東屋までローソク風の明かりがともされた道を行き、ボーイさんがお皿を恭しく運んでくるのである。
そういう食事をするグループがそこらあたりに沢山いるものと思っていたら、なんと今夜は私たちだけ。
折悪しく昼間のピーナッツ料理の食べすぎがたたって、胃が猛烈に痛くなり、私は食事どころでない状態になった。明るい場所だったらきっと真っ青な顔をしていたと思う。
運ばれてくる料理にほとんど手をつけることが出来ない。とうとうお薬を飲みにはるばる部屋に戻った。Yさんは一人ぼっちで、その寂しい場所に所在のない時間をすごすことになり、気の毒このうえない。
薬を飲みどうにか引き返すと、ギターを抱えた歌い手が二人私たちだけのためにやってきた。もう間違いなくこのプランは新婚さん用のものだったのだ。
後で振り返ると可笑しいが、その時は腹痛と戦いながらのにこやかな顔は必死だった。

必死の笑顔

寂しいYさん

10月1日  腹痛はうそのようにおさまって、今日はホテルで予約を入れた町のエステである。ホテル内のエステは満員で予約できなかったのだ。実は帰国日は何も予定がなかったので、巡回バスでクタの街へ行こうかとも考えたのだが、バスの時間や乗り場がよく分からず、結局エステにしたのである。

送迎車を待っているときに、
門のところで
正装して客を迎える係りの
女性と。
結婚式があったらしい。
可愛い女の子が正装して。


車で迎えに来てくれ、かなり走ってデーハースパ(dh・spa)という店につく。
トイレに入ると臭くて印象が悪い。昔は日本だって同じだったのだが無臭に慣れると、においだけで清潔感が左右されてしまう。
ほぼ全身をマッサージしてくれ、最後にパックらしきものをしてもらってそのまま横になっているうちに、口をあけて寝てしまったようだ。
マッサージ剤やパック剤を充分落としてくれないので、敏感性の私は、ホテルに帰ったら顔にぶつぶつが出来ている。チェックアウト後なのでトイレで顔を洗ってやっとすっきりした。(家に帰った時、すぐお風呂に飛び込んだのは勿論である。)
帰国便は深夜なので、ホテル内の日本料理店で夕食を摂る。そこそこ美味しかった。
迎えの車がなかなか来ない。JTBの係員は来ているのに、HISだけ来ないのだ。やっと来たHISのほかの係員に、もう30分も遅れているというと、テロがあったから渋滞してるのだという返事。ホテルのフロントでテロがあったそうですねというと、たいしたことはないという返事。
やっと1時間遅れで送迎車が来て、それもプライベートの筈なのにもう一組と相乗りである。
空港では予定の飛行機が30分遅れで出発したので、あわてることもなく搭乗し無事帰国の途についた。
翌日朝到着した関空は騒然としている。ニュースカメラマンがバリ島からの帰国者を追っているしインタビューするキャスターも沢山いる。それでもそれほどたいしたことがあったとも思わず家に帰ると、夫がとても心配していた。ニュースを見て驚いた、クタの街、HISの建物が映し出されている。そのすぐ隣のレストランで、イスラム教徒の自爆テロがあったというのだ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
インターネットのテロ関係の記事より
 インドネシアの観光地バリ島で一日午後七時十五分(日本時間同八時十五分)ごろ、複数回の爆発がほぼ同時に起きた。AP通信は少なくとも二十二人が死亡、五十人の負傷者が出ていると伝えているが、死傷者はさらに増える恐れがある。インドネシアのテロ対策担当者は同通信に対し、「明らかにテロ組織の犯行だ」と述べ、国際的な観光地を標的にした同時多発テロであると断定した。
 犯行声明などは今のところ確認されていないが、欧米観光客を標的にした同時テロという手口や、二〇〇二年十月に同じくバリ島で起きたディスコ爆破テロと場所や発生した月が一致するといった特徴から、インドネシア治安当局は、イスラム過激派による犯行との見方を強めている。
 爆発は、欧米やオーストラリアからの観光客が多い海岸沿いのクタ地区と、高級リゾートホテルが密集しているジンバラン地区で起きた。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宿泊していたホテルはこのジンバラン地区にあったのだ。
インドネシアはイスラム教の国だが、バリ島の宗教だけはヒンズー教である。バリが標的にされる理由は、欧米の観光客が沢山いることだけでなく、ここでのテロはイスラム教徒に被害がないということもあるのではなかろうか。わずかなチップも合掌して受け取る慎ましやかなホテルの従業員をその笑顔とともに思い出す。
             

世界の旅Top ...... ホームページTop