使ってこそのワープロ礼賛
1997年9月10日 朝日新聞 声

病院の待合室で「うちの嫁は包丁も満足に使えない。変な皮むき器を使っている」と悪口を言っているお年寄りがいた。私はかなり器用な包丁の使い手と自認していたのだけれど、ある時友人宅で皮むき器を使ってその便利さに驚き、以来手放せない道具になっている。
何も皮むき器礼賛をしようというわけではない。くだんのお年よりは皮むき器を使ったことがないのだろうと思うのだ。自分がよく知らないことを評論したり批判したりする人が世間に多い。ワープロの手紙に心がこもっていないとのコメントを見ると、「あんたワープロ使ったことないのやろ」と言いたくなる。
先日、私のワープロのはがきに、「私だけのためにワープロ打ってくれたの」と感激してくれた友がいた。そうなのだ。文を作り、文字の大きさや行間隔、字体などを決めてはがきにうまく収める作業は、ボールペンで走り書きするのに勝るとも劣らぬ心のこもった仕事だということが、ワープロを使う彼女には分かるのだ。
その上、この作業は老化防止に何よりだ。ワープロの前に座ると、文章を作りたくなるのは私だけではないだろう。敬老の日が近い。子供、孫一同でワープロのプレゼントはいかが。

                       追記  今ならパソコンでしょう